Vol.91

ガンと闘うスピッツ

公開日:2018.05.19  / 最終更新日:2023.12.11

皆さま こんにちは♪

この1ヶ月は半袖で過ごせる位、暑い日もあればストーブをつけようか迷うほど寒くなったり、と寒暖差で体調を崩しがちなワンちゃんが多かったです。ようやく春の陽気も落ち着いてきたのですが、今度は少しずつ梅雨の湿邪が入り始めてきています。

先月お話したように、「肝」が弱ると「脾」にも影響が出てきます。そこに「脾」の天敵である湿が入り込んでくると、さらなる負担になります。

梅雨の時期は、利水作用のあるハトムギやトウモロコシのヒゲがおすすめです。煮出してお水の代わりに飲んだり、フードにかけてごはんと一緒に摂ると良いでしょう。

大きな環境の変化のため

さて今月は、ガンと闘っている12歳のスピッツの女の子ぴゅあちゃんのお話をしです。

ぴゅあちゃんが初めてキュティアに来たのはもう4年も前のこと。当初は先住犬のお姉ちゃんと一緒に、付き添いで来ていました。人が大好きで、来るたび首と腰をくねらせてしっぽをブンブン振って喜んでくれました。

若い頃から夏になると時々おもらしをしちゃったり、頚や膝が痛くなることがあり時々鍼灸治療でケアをしていました。

昨年は大好きだったお姉ちゃん犬が旅立ち、またしばらくして新しい子犬がお家に来たりと、ぴゅあちゃんにとって環境の変化がものすごくあった年でした。

ストレスから「肝」が弱り「脾」にも

そのため昨年は、6月頃からお腹の調子が悪いのがしばらく続きました。これもまさに先ほどお話したストレスから「肝」が弱り、胃腸にあたる「脾」も弱ってしまったというケースです。

食ムラもひどくなり「脾虚」が続いていたため、
毛もツヤがなくなり
パサパサになって
顔つきもドンヨリ

と元気がなくなってしまいました。

CT検査をすると

秋頃にはようやく体調も安定してきて、元来の元気なぴゅあちゃんに戻りつつありました。しかし年明けにおでこのあたりがコブのように出っ張っているのに気づき、慌てて大学病院でCT検査。結果はおでこにある前頭洞という場所の扁平上皮癌でした。

大学病院では手術は適応外で、放射線治療もやっても余命は数ヶ月との判断でした。飼い主さんはできることならなんでもしてあげたい、と週1回の放射線治療を選択されました。

犬の放射線治療は毎回麻酔をかけなければなりません。

キュティアでは、麻酔による負担やストレスを少しでも楽にしてあげる緩和ケアと、ガンの進行を抑制するホモトキシコロジーの注射薬をツボに打つ水鍼治療を行うことにしました。

ガンと闘う上で大事な指標となるのが、白血球の分類の中の好中球とリンパ球の割合(G/L比)です。好中球の数÷リンパ球の数が3に近いほど良く、5を超えると予後が悪いといわれています。

体がストレス状態にあるとガンと闘ってくれるリンパ球の数が少なくなってしまうため、この数値が高くなってしまいます。

お灸でリンパ球を増やす

ではこのリンパ球を増やすためにはどうしたら良いのでしょうか。

もちろんストレスをかけないことも大事なのですが、お灸をすることでリンパ球が増えるのです。前半身の腫瘍には手三里、後半身の腫瘍には足三里、というツボの灸がいいと言われています。

ぴゅあちゃんの場合、放射線治療を始める前のG/L比は6。4回の放射線治療を終えた後は10を超えていました。

このままではまずい!と自宅で毎日三里と腎のツボにお灸をしてもらいました。そして、ガンに効くとされる漢方薬も飲み始めたところ、1ヶ月でG/L比が3まで下がったのです☆

元気の秘訣は?

放射線治療の副作用か、腎臓の数値が少し高めで食べ物の好みのムラはあるものの、お腹の調子もよく今は元気に過ごしています!何よりもご家族が前向きにぴゅあちゃんに向き合っていることが、ぴゅあちゃんの元気の秘訣だと思います。

「先日のGWは一緒に旅行へ行ってきました~!」

とうれしそうな顔を見せてくれたぴゅあちゃん、いつもより体調もとても良さそうでした。

このまま少しでも長く穏やかな日々が続きますように☆

それではハッピードッグライフ♪

キュティア老犬クリニック
獣医師 佐々木 彩子
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